装丁家による電子書籍についての考察『装丁、あれこれ』
装丁家である桂川潤さんによる、装丁についてのエッセイをまとめたものです。 主な要素としては、さまざまな装丁家の取り組みや作品についての考察・分析を行ったり、本と装丁に関するこれからの動きや流れについてになります。
ちょうど電子書籍が活発化してきたときの本でもあるので、電子書籍についての考察も多いです。装丁家からみた電子書籍の意味やありかた、電子書籍がもっと広まった際の装丁の意味や立場についての考察が多く、おもしろい内容です。
他の装丁家の活動や思考についてもたくさん触れられていますので、装丁全般の状況や雰囲気を知るのにとても良い本でした。 装丁に関する関連書籍なんかもいっぱい出てきます。紹介されていた本も読んでみたいと思いました。
ブックデザイナー
装丁以上に本の版組など全体のデザインを行う人をブックデザイナーと呼ぶそうで、著者もこれに当たるそうです。本を読む際には、解釈し翻訳し再構成を行うことになります。 書店の未来や本の未来なんかも考えられており、とても大変そうな印象でした。これから本がどのような方向に進んでいくのかとても楽しみでもあります。
「本は現実世界と繋がった異界」。装丁は異界への「扉」であると考えているそうです。本には本の形があり、装丁はそれと現実世界をつなぐ端のような役割のようです。買ったら中身を取り出して捨てられるパッケージとは異なるものという認識です。
装丁を眺めることで内容を想像し、本の予感を感じさせるものである。こんなふうに装丁を語っていました。人によってさまざまな捉え方があるようで、とても興味を持ちました。こればっかりは実際にやってみないとわからないものなのかなと感じています。
電子書籍と紙の本
電子書籍はとても便利ですが、もろもろの制約のある紙の本のほうが感覚による体験もあり、人間性の面から優れているのではないか。本が電子化されモノでなくなれば、装丁も必要なくなってしまうのではないか。電子書籍ならではの表現を探すべきなのかもしれません。モノからコトへ遷移する時代になっている予感です。
電子書籍は色調などの表現も豊かですし、拡大縮小も出来ます。デメリットはデバイスの画面サイズに束縛されてしまいますし、今どのへんまで進んだのかもわかりにくいです。一方、紙の書籍は開く面白さがあるといいます。ページを進んでいく感覚は紙の本でのみ得られる感覚で心地よいものです。
おわりに
著者のウェブサイトもありました。装丁に関する概要であったり、これまでの実績のいくつかを閲覧できます。 個人的に電子出版をやってみたという取り組みもあり、pdfのデータをダウンロードして読むことが出来ます。 桂川潤のサイト
「批判だけでなく代案を」という考え方は良いことだと思いました。私も気をつけたいと思います。