躓くような文章の方が面白い『書くための勇気』
批評を書くための心構えや技術についての本です。 著者は作家であり、編集にも携わっている方で漫画なんかも書くようです。
途中に漫画も挟まっており、良いテンポで読めます。漫画はゆるーい感じなのですが、しっかりいいことが書いてあるので飛ばさずに読んでほしいです。
著者は他にもWEBでは出版社のエピソードや実態を描いた漫画を連載しているので、時間があれば読んでみるとおもしろいです。フィクションですが、出版社の内情のようなものがわかります。
批評性を意識することと言葉を鍛えることで、書くための勇気を手に入れることがこの本の目的です。 どちらも難しいのですが、読む人の気持ちを考えて、反応を受け止めることでそれらは磨けるそうです。
きっちりとしたルールに当てはめて文章を書く進めではなく、もっと個性を活かして考える隙間を与えるような文章の書き方のコツが多かったです。編集をやっている作者なので、そういった思考を持っているのかなと思います。
おもしろいと思った部分を参考にメモしています。
書いてみること
まず、誰に書くかを考えないといけないことに気づきました。どんな人に読んでほしいか、どんな人に知って欲しいかです。 それでも、届く読者は一人ではなく大多数。万巻の書物を制覇してきた知の権化だと捉えるのがいいそうです。
一万人に伝わるけど半年で忘れるものより、10人にしか伝わらないけど10年覚えてくれる方がいい。これは良い言葉ですね。メモしておきます。
わかりやすいの弊害
わかりやすくするとわかりやすい結論に引き込まれてしまいます。 文章を短く書くとか、YesかNoか立場をはっきりするとか、そういった良い文章の書き方もありますが、この本ではそれらとは異なる考え方も提案しています。
わかりやすく書くための型に当てはめてしまうと、個性がなくなり自分らしい文章ではなくなってしまいます。型に当てはめることで簡単に文章は作れますが、借り物の文章の様に感じられるかもしれません。
ちょっと躓いてしまうような文章も、読み手側の考慮や思索の余地があって良い文章になるそうです。 本の中で、夏目漱石や太宰修などが例として出てきますが、それらの文豪も一見読みにくい分だったりします。しかし、読者を引きつける何かがあり、その個性的な部分を大切にするべきという考え方です。
多様性という言葉の意味を考えて、YesかNoかのみの2元論ではなく、文章の間の感情を潜ませるような言葉を選べると良いです。
コトコトしない
「こと」とか「的」などの言葉を使ってしまうと、つ与えたいことが曖昧になってしまいます。わざとそうする方法もあるようですが、なるべく避けていったほうが言葉は磨かれます。
おもしろいという感情を「おもしろい」以外の言葉で、つまらないという感情を「つまらない」以外の言葉で伝える練習をすると、言葉の使い方がうまくなるそうです。
おわりに
書く行為自体が書き手にとって思考を熟成させるプロセスとなるので、書くことをやめず続けることを心がけたいと思います。
SNSがなどで誰しもが発信できるような社会になっています。より自分らしく、そして誰かを動かせるような言葉を作れるように努力していきたいと思います。