忙しい毎日に余白を作る『労働者のための漫画の描き方教室』
以前紹介した、書くための勇気の著者、川崎昌平さんの本です。
「毎日仕事が大変で消耗しているけど、息抜きのために漫画で表現しよう」というものです。 漫画を書けば働くことさえ楽しくなる!という考え方であり、漫画が上手になるための本ではないです。
漫画家向けではなく、あくまでも労働者が空いた時間に漫画をちょっと書くための本です。上手に書くためのテクニックとかは無く、特に練習したわけでもない人がそれなりの漫画にするためのテクニックなどが書かれています。
絵の上達が目的ではなく、日々の感じたことなどを漫画としてアウトプットすることで、スッキリするとともに世界の見え方が変わるというものです。
アウトプットの手段は色々ありますが、やろうと思えば素早く書けて文字や言葉を中心にして表現するために、漫画というプラットフォームをオススメしています。
本がすごく厚く470ページくらいありました。手に取るのに勇気が入りますが内容は漫画の箇所が多いので、見た目よりボリュームは少ないです。
表現とは思考のための道具である
なんとなくで生きていると考えるのをやめてしまい、ただ苦しいことに耐えるだけになってしまいます。 漫画として表現しようと意識することで考える必要が生まれ、日常の出来事に対して思考を行うようになります。自分が今持っているものにも目が向きますし、自分とは異なる考え方や意見も理解できるようになるかもしれません。
子供の頃ノートの端っこにパラパラマンガなんかを書いていた人も多いのではないでしょうか。あんな感時からのスタートだと思います。そこから、普段の生活での気付きや嫌なことなどをネタにしてアウトプットしていこう、という取り組みでしょうかね。
この本を読むと、日常生活の中で観察することの必要性がわかります。そこから漫画としてアウトプットする種が見つかりますし、さまざまな発見があります。観察する前から自分が変わらなかったら意味がなく、変わろうと願って観察を行う必要があるそうです。そのため、結論ありきの観察では変化は無く、意味も薄くなってしまうので注意しましょう。難しいですが、変化を恐れず柔軟に、かつしっかりと起きていることを観察しようということですね。思っていたのと違う結論や結果になったとしても、「そういうこともあるのか!」という新しい価値観を受け入れていく柔軟さが漫画を書くことに活きてきます。
敗北のデザインと変化
敗北から学び、変化していくことについて書かれています。他人や環境と比較して敗北するのではなく、しっかり自分が原因で敗北したことを理解することで、自分が変化しなければいけないこと、どのように変化する必要があるのかを学びます。
これぞという敗北とはなかなか出会うことは難しいそうですが。そんな敗北も楽しんで向き合うことが重要なようでした。著者も敗北というものに前向きに向き合うことができるようで、とてもいい価値観だなあと感心します。目を背けたり逃げ出したくなること、他人や環境に責任を押し付けたくなることは大いにあると思います。それでもしっかり自分ごとにして向き合うことは、かなり体力も使う上に勇気がいることです。
鼻とか眉毛とか背景とか表情とか
これらに対して、不要論がでてきます。漫画ではこれらは無くてもいいのではないかと。 形式のためにそれらを書くぐらいなら、読者が想像するための余白として残しておくくらいがいいのではということです。昔の西洋の絵画などがどうやら参考になるそうです。
何を書いたら読者は楽しんでくれるかよりも、何を書かなかったら読者は楽しいかを考えるようです。難しいですね。 そうして普段のやらなくてはいけない仕事とは関係無いこと、つまりやりたいことを考えることで前向きに取り組むことが出来るようになります。
おわりに
独特な漫画の描き方ですが、不思議と面白く読めるものです。毎日忙しくてしんどいなあという方にこそ、この本を読んで何らかのアウトプットに取り組んでほしいです。ネットでの意見は発言への付き合い方なども書かれているので、参考になると思います。
全般通して、毎日頑張って働いている人に向けて肯定してくれるようなメッセージが散りばめられています。嫌なこともたくさんあると思いますが、なにかそこから活かせることや学べることもあるかもしれません。自分にとって必要なものをしっかり選択して、未来のために活かしていけるような余裕や余白が必要なのかと思いました。