しゃがんでデザインを見る『デザインの知恵』
問題を解決するデザインというよりは、情報デザイン・社会のデザインに関する内容の本です。 考え方や概念についてのスケッチが書かれており、体型的に理解することが出来ます。
芸術と科学を比較しつつ、その学びや意味を考えているような本です。著者はデザイン系の学校の教授のようで、デザインの授業などを行っています。デザインの学び方や取り組むべきことなどについて考察しているので興味があればとてもおもしろい内容です。
プロダクトやWebデザインのこと、グラフィックのことは書いてありません。非物質的なデザインとその学び方につての知識を学ぶことが出来ます。言葉のデザインといったところでしょうか。
同じデザインと言っても、いろんなジャンル考え方があるのでややこしいですね。 情報デザイン、グラフィックデザイン、プロダクトデザイン、建築デザインと言ったところでしょうか。それ以外にも「デザイン」という単語は色んな意味で使われるように思います。
デザインに唯一の正答はあるか
理科や数学では一つの正しい回答が得られますが、デザインを行う場合はそうではないようです。
回答する人によって答えは異なりますし、それがいいことでもあります。 更には使う人がいて始めてデザインが意味をなします。そのため使い手が多様であるためデザインもまた多様となります。
そのため学び方も難しいようです。ただ答えを探すのではなく、問題を定義することや創作を行うことなんかも挙げられています。更には野菜を育ててみたりなど内容は多岐にわたり、それらの活動の中で道具やものとの関連性を見つけていくことになります。
科学と芸術の関係
科学は一つの答えに向かって可能性を狭めながら唯一の答えに迫っていく、垂直の答え探しです。 芸術は未知の世界への可能性を横へ広げて選択肢を増やしていく、水平の答え探し・答えづくりだと言えます 。
科学と芸術では探求の方法・探求の狙いが根本的に異なるものです。
やって・みる・わかる
これはデザインの展開法のことらしいです。
前半の「やって・みる」は自身が体験することで何かを感じること。後半の「みる・わかる」は表現を振り返ることでその意味を見出すことだそうです。 こうして進めることでデザインの考え方となるようです。
おわりに
著者が携わったデザインプロジェクトの実例なんかも載っています。デザインを行う上での発見やプロセスなどが描かれているので興味を持って読み進めることが出来ます。
デザインの学び方として、スケッチを書くというものが挙げられていました。気になったもの面白そうなものをスケッチして、どこがおもしろいのか、どうして気になったのかということを考えます。次の日や時間がたってからまたスケッチを行い、その間での変化を観察します。 そうして見ることで、そのものの意味や関係性が見えてくるそうです。
好奇心に頼りしゃがみこんでものを観察することにも意味があるそうです。子どもたちと一緒に観察できるような体験ができるとデザインの勉強として効果的らしいです。どこが気になったのか、なぜそう思ったのか、どのように変化しているのかといったことを、自分の表現から振り返って考えることで、より深くものを見ることが出来ます。
面白い仕事をするのではなく、仕事を面白くするような考え方が必要です。子供の時の感覚に戻っていろいろなものに無邪気に取り組むことが、改めて必要になっているのかもしれません。