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紙の本から感じるインタラクティブ体験『指を置く』2019/04/18

紙の本から感じるインタラクティブ体験『指を置く』

平面のグラフィックに読者が「指を置く」ことで、解釈が変わることを表現した本です。 立体的に見えたり、生き物がいるように見えるなど、平面でしかない本のページにいろんな効果を与えてくれます。平面という制約がある中で読者の指を関与させることで、多様な表現を実現できるという感じでしょうか。 実際には動いていないはずなのですが、錯覚でインタラクティブな反応があるように感じてしまいました。

大きい本ですが、内容はグラフィックが主です。文字は少ないのでさくっと見ることが出来ますが、「指を置く」ことを書くページで行うので、ちょっと時間がかかるかもしれません。 どうしてこう見えるのであろうとか、指を置く前と後での違いなど不思議に思うところが満載です。

各作品の説明や解説も載っていますので、解釈に迷っても大丈夫です。むしろ、説明とは異なる解釈を思いつくかもしれません。そうしたものも大切だと思います。

2次元の紙のグラフィックにもかかわらず、いろいろな見え方や解釈を表現できることはとても面白いと感じました。広告とかLPとかに応用できるのかもしれません。スマホ等のタッチ操作のインタラクティブ表現の参考にも良いと思います。そういう意味ではUI/UXの良い参考にもなりそうです。

指の存在

グラフィックに対して指を置くことによる解釈の変化を通して、「人間にとっての指の存在や関係」といったものを解明していく試みだそうです。すなわち「私達にとって指とは何か」を解明するということです。

なんだか難しそうですが、あまり深く考えずにとりあえず指をおいて見てみると良いです。いくつか進めていくうちにどうしてだろうか?とかなんでこう見えるようになったのだろう?とか疑問が湧いてきます。そうなったときに「指とは何か」ということについて、ゆっくり考えてみるといいです。

空間を読み解く指

例えば、指を置くことでグラフィック内の空間を理解することが出来ます。どこが奥に合って、どこが手前にあるのかといったことであったり、指によって引っ張られている状態であることがわかったりします。

指を置く前、置いた後、離した後では解釈が異なり不思議な感覚でした。指によって動いたり支えられたりしている様に見えるので、グラフィックの意味も大きく変わります。

実際にグラフィックに指をおいてみるとさまざまな印象があります。何かに見られている気がしてそわそわしたり、動かないように力を入れてしまったり、触った感触がイメージされたりします。指をおいただけで解釈が変わってしまうこと、自分が力を加えたような気分になってしまうことは印象深く、おもしろいと思いました。

自分ごとになる

指を置くことは、すなわち「自分ごととして扱う」ということだそうです。指を置くことで自分がその絵に影響を与えたかのような印象をもち、他人事であったものが自分ごとになってしまうそうです。自分が影響を与えた様に見えるため原因が自分にあると思い、絵への印象が変わってくるそうです。たしかにそんな印象を受けました。インタラクティブなUIはこういった感覚を利用しているんですね。あらためて学ぶととても勉強になります。

指を置くまではただの絵だと感じていますが、指をおいた途端に自分の指が影響したような、絵の世界の中に作用したような感覚になります。もしくは「これは指がこういう力を与えたからこの形に変化したんだろう」とかとんでもない理論を頭の中で想像してしまいます。そんなはずがないのですが、実際に目でその状況を見ているのでありえないことを、すんなり受け入れてしまう様になっっているそうです。

おわりに

指を置くことで、感触があるような、反作用を受けているような、そこに生き物がいるような感覚を味わうことが出来ます。指を置くと想像力が働き、ありもしないことや起きるはずのないことが起こしているような感覚になりました。インタラクティブな表現の勉強や参考にとても良い本でした。

グラフィック作品集なのですが、指を置くことによる解釈への影響を意識して認知できる本でした。スマホの操作などで指を使った操作は当たり前になっており、タップに対するインタラクティブな表現も多様になっています。UIに関わる重要なものですので、どんな印象を与えるのか、違和感の原因は何なのかといったことを考えれるようになると役に立ちそうです。

とてもわかりやすく、想像力を働かせるようなグラフィックが多かったので、子どもに読ませてみてもおもしろいと思います。経験が少ない子どもだと、大人とはまた異なる解釈をするのではないかと思います。多分スマホの操作でも、そういった解釈の差が生まれているかもしれないですね。

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